精子の質は「妊娠率」だけでなく「流産率や障害率」にも影響しているのではないか
一般的に、精子の「正常形態率」が高いことは、妊娠の確率を高める要素の一つとして知られており、
形の整った精子が多いほど受精が成立しやすくなります。
しかし実際には、精子の質が影響しているのは「受精の瞬間だけ」なのでしょうか。
僕はこれまでの経験から、むしろ受精後――つまり、胎児の発育や妊娠の維持にも、精子の質が大きく関係しているのではないかと感じています。
なぜそう考えるようになったのか。
それは、実際に関わってきた方々の経過を見てきたからです。
例えば、あるご夫婦は、8年もの不妊治療を続けていました。
人工授精や体外受精を何度も繰り返し、そのたびに高額な費用がかかり、精神的にも経済的にも限界に近い状態でした。
「もうこれが最後かもしれない」
そんな状況の中4人目の精子提供者として僕へご相談をいただきました。
結果として、その方は提供者を僕へ変えた途端に妊娠し、元気な赤ちゃんを出産されています。(2人目の妊娠もすぐに成功し、今妊娠8ヶ月です。)
また別の方は、不育症を抱え、4度もの流産を経験していました。
妊娠はするものの、どうしても途中で育たない。
「もう自分には子どもを産むことはできないのかもしれない」
そんな絶望の中でのご相談でした。
しかし、その後は妊娠が継続し、こちらも無事にご出産されています。
もちろん、これらはすべての要因を精子の質だけで説明できるものではありません。
それでも、これまで関わってきたケースを振り返ると、ある特徴があります。
それは、
これまで流産や早産、障害の報告が一件もない
ということです。
偶然と言えば偶然かもしれません。
しかし、「精子提供者を僕に変えた途端に変化が起こる」という結果が何度も重なると、さすがに偶然だけで説明するのは難しいのではないか、と感じるようになります。

精子は単にDNAを運ぶだけの存在ではありません。
近年の研究では、精子のDNAの損傷や断片化が、流産率や胚発育に影響する可能性があることも指摘されています。
つまり、
- 精子の質が低い
- DNAの損傷が多い
こうした状態では、受精はしても、初期流産という形で自然淘汰されたり、その後の発育に問題が生じたりする可能性があるということです。
逆に言えば、質の高い精子は、受精後の発育の安定性にも寄与している可能性があるとも考えられます。
もちろん、医学的にすべてを断定することはできません。
個々のケースには必ず様々な背景があります。
しかし少なくとも、精子の質は
妊娠の確率を高めるだけでなく、流産や発育トラブルのリスクを下げる可能性がある
そう考えるだけの理由は十分にあるように思います。
不妊治療という分野では、どうしても女性側の負担が大きく語られがちです。
実際、多くの検査や治療は女性の身体に集中しています。
しかし、本来は妊娠というのは「二人の遺伝子」で成立するものです。
だからこそ、
精子の質という視点
は、もっと重要視されても良いのではないかと思います。
妊娠は奇跡の連続です。
絶対がない以上、その奇跡の確率を少しでも高めるために、できることをしっかりと積み上げていきたいと思います。